「ホワイトアウト」に「震源」「奪取」日本屈指のストーリーテラーでしょう。よく東野圭吾とならんで、ベストセラーのところにあるのですが、この2人の作品は、実際読んでまったくハズレがありませんね。
題名はヘレンケラーとかけているのだと思います。事故によって植物状態になってしまった主人公が、やがて回復し、社会復帰するのですが、すべての記憶を失っていることに我慢ができず、自分探しがはじまります。過去の自分はどんな人間だったのか。なぜ、母や病院の関係者、周りの人たちはそれを隠そうとしたのか。
やがて主人公は過去の自分の友人、恋人に出会い、がむしゃらに自分の過去に向かって突っ走っていきます。
はらはらしながら、最後まで一気に読んでしまって、ああこれで終わってしまったんだなあという、ちょっとさみしい感想を持つ、このしあわせ。
では、最後に解説から引用。
「ラスト近く、真実を求めてあがく主人公に向かって、もういいじゃないかお前、過去なんて知らないほうがいいんだと声をかけたくなるのもそのためだが、しかし作者の凄いところはそれも計算ずみのところで、読み終えると作者の術中にはまっていたことに気づいて唖然とする。まったくとんでもない作家がいたものだ。
しかも、人間の意志の力を描くラストの挿話に見られるように、根源的な力強さに満ちているのがいい。ある意味では辛い話でありながら、爽快感が漂っているのはそのためだろう。」
テレビドラマにもなった作品みたいですね。今度DVD買おうっと。