大宅壮一ノンフィクション受賞作!なんと?この作者に、そんな骨太な作品書けるの?そんな疑問から読み始めましたが、やられました、これはいいです。
物語は3部に分かれていて、それぞれ1人づつ、3人の少女が語られています。ギリシャの青い空を夢見るリッツァ、嘘つきアーニャ、孤高の天才少女ヤスミンカ。舞台は激動期のプラハ。
まぶしいほどの思い出の数々の一方で、ソヴィエト支配の東欧での生活は緊張感に満ちたものでした。対立する民族どうしのエゴや共産主義の矛盾。でもその中で、思春期の少女たちのイノセンスをいきいきと描いています。やがて泥沼の内戦状態に突入していく東欧。くるくると変わるイデオロギー社会の中で、翻弄されていく少女たちの人生。
そして30年を経て、著者は3人に再会します。彼女たちはどう生き、どう考え、どう変わったのでしょう。最後の章ではもう感情移入してしまって、ヤスミンカを探してベオグラードの街を駆けずり回るあたりは、読んでて手がぶるぶるしました。とても一生懸命で、素直な文章です。読む前に、プラハの春についてくらいは、予習しておくといいでしょう。
題材は重いですが「魔女の1ダース」よりもさらに軽妙な語り口です。さらっと読めちゃいます。例えば以下の文章。
「その、あそこがおっ立ったって、どこのこと?」
「チンボコに決まってるじゃない!」
「チチチチチンボコ!?」