現代物理学で最大の発見といわれているのが、相対性理論と量子力学です。相対性理論は有名ですね。空間がゆがむとか時間が遅くなるとか、なんとなくわかるような気がします。ところが、量子力学はわかりにくい。なにしろ、量子論の基礎を考えたファインマンという人自身が、「量子論をわかったという人は、量子論をわかっていない」というくらいです。禅問答のようですね。
量子の振る舞いは、まったく物理学にあわないのです。ある友人は、「量子の世界てのは、あれだな、あの世の出来事だな」といってました。言いえて妙ですね。それでも、この量子力学を利用した技術があるから、テレビや半導体といった製品が、世に出ているんですね。この矛盾もおもしろいすね。
というわけで、とち狂った物理学の教授様などが、「物理の本質は般若心経だ!」とかいう本をだしたりして、アカデミックな世界を混乱させていくのですが、それはおいといて、人類の頭で理解できそうもない量子力学を、コンピュータに応用することを通じて、解説しているのがこの本です。
非常に読みやすく、矛盾をはらみながらも進んでいくサイエンスの醍醐味を感じられる本です。電子回路の考え方と、暗号化の仕組みがとてもわかりやすく書いてありますので、普通のパソコン好きにもお勧めです。
以下は本文より、もしびびっとくるものがあったら、是非読んでみてください。
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「われわれが理解できていないことは、あまりにも多い。到底目には見えないたった1000個の原子でも、1000ビットの長さの数をすべて表現できる。これを10進数に変換してみよう。2の1000乗は、ほぼ10の301乗に等しい。したがって量子的重ね合わせを用いれば、0から9,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999,999までの数をすべて同時に表現できることになる。なんらかのアルゴリズムを走らせれば、10の301乗通りの計算をすべて同時に処理できるのだ。しかし考えてほしい。この数は宇宙に存在する素粒子の総数よりはるかに大きい。するとこの計算は、いったいどこで行われているのだろうか?